オーストリアの演出家オットー・シェンク (Otto Schenk)が、1月9日に逝去しました。享年94歳。
ご冥福をお祈りいたします。
シェンクは、1957年にザルツブルク州立劇場の《魔笛》の演出でデビューし、64年にはヤナーチェクの《イェヌーファ》でウィーン国立歌劇場デビューをかざると、1970年代以降には、コヴェントガーデン王立歌劇場(ロイヤル・オペラ・ハウス)、スカラ座、ベルリン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場等と契約し、モーツァルト、ドニゼッティ、ヴェルディ、ドヴォルザーク、プッチーニ、R.シュトラウス、J.シュトラウス、ワーグナー等の舞台演出を手がけました。また、米国でも、メトロポリタン歌劇場で演出を担当し、ワーグナーの《指環》の演出で好評を博しました。
シェンクの演出は、大胆な読み替えによるレジーテアターとは一線を隔した伝統的な舞台で知られ、例えば、ウィーン国立歌劇場で年末恒例の《こうもり》の舞台は、いまだに20世紀にシェンクが手がけたものがベースになっています。今年も年始に同歌劇場の《こうもり》が配信されましたが、1986年にカルロス・クライバーが指揮したバイエルン国立歌劇場の上演と、大きく変わっていません。
◇ J.シュトラウスⅡ: 喜歌劇《こうもり)
アイゼンシュタイン: エーベルハルト・ヴェヒター(Br)
ロザリンデ: パメラ・コバーン(S)
アデーレ: ジャネット・ペリー(S)
フランク: ベンノ・クッシェ(Bs)
オルロフスキー: ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)
アルフレート: ヨーゼフ・ホプファーヴィーザー(T)
ファルケ: ヴォルフガング・ブレンデル(Br)
ブリント: フェリー・グルーバー(T)
バイエルン国立歌劇場バレエ団
バイエルン国立歌劇場合唱団
バイエルン国立歌劇場管弦楽団
カルロス・クライバー(Vond)
オットー・シェンク(Prod)
(1986年12月@ミュンヘン バイエルン国立歌劇場)
このバイエルンの《こうもり》は、美しいパメラ・コバーン(S)が歌う魅力満点のロザリンデ、おどけたっぷりのエーベルハルト・ヴェヒター(Br)のアイゼンシュタインや、異様な貫禄を示すブリギッテ・ファスベンダー(Ms)のオルロフスキーら、珠玉の歌手陣に加えて、天才クライバーが残した数少ない貴重なオペラ上演記録です。
ウィーン国立歌劇場には、この伝説の演出家による伝統の演出を、今後も継承して欲しいものです。
ウィーン国立歌劇場webpage: Die Wiener Staatsoper trauert um Otto Schenk
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オットー・シェンク
R.シュトラウス:楽劇《ばらの騎士》 [DVD]
ギネス・ジョーンズ(S)、ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)他
カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団