国立西洋美術館で開催中の展覧会「モネ 睡蓮のとき」第一章「セーヌ河から睡蓮の池へ」では、最後の睡蓮の作品群が展示されています。

モネ 睡蓮のとき

1. セーヌ河から睡蓮の池へ
2. 水と花々の装飾
3. 大装飾画への道
4. 交響する色彩
エピローグ. さかさまの世界

連載記事: モネ 睡蓮のとき

 モネは、1893年に自宅の土地を拡張して、近くを値がれるリュ川(セーヌ河の支流)から水をひいて、池のある日本風庭園を造設しました。1895年頃から、その池に繁茂する睡蓮を描き出し、20世紀になるまでに大量の睡蓮の絵を制作しました。今回、この時期の初期の連作にあたる作品は、二点展示されています。


クロード・モネ  睡蓮、 夕暮れの効果(マルモッタン1897–1898)
◇ 睡蓮、夕暮れの効果 1897年 油彩/カンヴァス 73×100 cm マルモッタン美術館

クロード・モネ  睡蓮(鹿児島県立1897–1898年)
◇ 睡蓮 1897–1898年頃 油彩/カンバス 89×130 cm 鹿児島市立美術館

 マルモッタン・モネ美術館の《睡蓮、夕暮れの効果》は、水に浮く睡蓮の葉と花をクローズ・アップで描いています。おそらく、晴の日に描いたもので、水面は空の色を反映して鮮やかな水色で彩色されていますが、その表情は淡泊で、睡蓮に主眼がおかれています。
 一方、鹿児島市立美術館の《睡蓮》では、対象となる睡蓮の葉と花がメイン・モチーフであるところは《睡蓮、夕暮れの効果》と同じですが、多分、時間帯は夕刻に近く、画面全体が濃い藍色に支配されており、それが二輪の花をポツリと浮かび上がらせる効果をもたらしています。葉は、横方向の粗い筆致で描かれ、水面との彩度に大きな変化はないものの、水面を縦方向の筆致で描くことで、そこに浮く葉の存在を明らかにしています。静謐な夜の静寂に浮かぶ睡蓮の幻想的な情景が、そこにあります。


画像出典: wikimedia commons
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